香港法人の登記制度について~香港の商業登記と会社登記について

香港は日本から距離的に近いこともあり、香港でビジネスを行うため、香港に法人を設立されるケースは多くあります。香港は中華人民共和国の一部ではありますが、基本的に1997年の返還前の制度を維持しているため、事業の実態は香港にはなくとも資金の決済センターなど様々な目的で会社が設立されているようです。

香港では事業に関する登記と呼ばれるシステムが大きく2つあります。1つはBusiness Registration Office of the Inland Revenue Department (内国歳入局事業登録所)というところで商業登記というシステムがあり、もう1つはCompanies Registry(“CR”公司註冊處)というところで会社登記というシステムがあります。前者の商業登記制度の方は、香港で事業を行うには個人、法人の形態を問わず、内国歳入局事業登録所での事業登録が必要となります。事業登録が済むと商業登記証という書面が発行されます。これは日本の商業登記簿謄本とは意味が異なり、いわゆる事業を行うための許可証という位置づけです。従って1通しか発行されませんし、第3者に交付されるものでもありません。また、この証明書には役員の情報もないため、日本で登記簿謄本の代わりとして使うこともできません。

後者の会社登記制度の方は、法人のみ登記をする必要があります。上記の事業登録をしていても免除されるわけではありません。こちらには会社名、登録事務所の所在地、資本金、役員などの情報が登記されます。また、申請した書類の大半は公開されており、誰でも取得が可能です。

法人ではないのに商業登記証を使用して、商号名で日本の不動産登記や会社登記がなされていたり、クライアントから受領した現状を反映していない会社登記の書類が日本の不動産登記や会社登記がなされていたりする事案も散見されます。これらの登記に対しては通常は更正登記をすることになるのですが、中には実体法上無効な登記ということで後日抹消登記をする必要がでてくることもありえます。会社にせよ不動産にせよ、一旦登記がなされるとそれを基礎に様々な取引が発生しますので、後日無効ということになると甚大な損害を発生させることもありえます。

なまじ日本の制度と同じ名称や似た名称の制度があるばかりに、誤ってそのまま使用しまいがちですが、外国の制度ですので似ているからという理由で判断されるのは非常に危険です。司法書士の先生が香港人、もしくは香港法人が関わる案件を受託される場合、国内案件以上にクライアントからの資料を鵜呑みにせず、裏付け調査をされることをお勧めします。

証明書入手後には、こちらの記事もご参照ください。香港法人が日本で不動産を取得する場合の登記事項の表記

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