本国官憲とはだれか。Justice of the Peace治安判事の響きはそれっぽいけれど。

渉外案件をする司法書士にはなじみのある先例です。

(法務省民事局のホームページよりhttp://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00346.html

○在留邦人の署名証明について
(昭和48年4月10日民三第2999号民事局第三課長事務代理回答)
(要 旨)
1 オーストラリア国の公証人又は治安判事が,同国法に基づきStatutory Declarationの形式により,同国在留の邦人の為になした署名証明は,日本国総領事館が行う署名証明に代えることができる。
2 右の場合,原文書が外国語により作成され,また本人の署名が日本文字の署名だけでも,ローマ文字の署名を並記したものでも差し支えない。
3 オーストラリア国の公証人または治安判事が,同国法に基づくStatutory Declarationの形式により在留邦人のためになす,署名証明書中に,直接特別受益の内容,又は所有権移転登記の承諾等の具体的内容が記載されておれば,それのみで特別受益の証明書や承諾書として取扱うことができる。

今のようにオンラインで外国の法制度を調べる術もなかっただいぶん古いものです。なお、「治安判事」はJustice of the Peaceの訳語です。治安判事と聞くと裁判官か何か、を想像すると思いますが、現代のオーストラリアでは法的なバックグラウンドは要求されず善良な市民であることなどが主な要件の無償の名誉職のようなもので、主に州内で使用する書類の証人をする人のようです。

この回答、内容に違和感があります。『オーストラリア国法に基づきStatutory Declarationの形式により』とありますが、オーストラリアは連邦国家。連邦法と州法があります。連邦法(Statutory Declarations Act 1959)のstatutory declarationsは『Commonwealth statutory declarations are made on matters relating to the Commonwealth or the Australian Capital Territory (ACT)(連邦又はACT(直轄地、首都キャンベラとほぼ同義)に関する事項につき作成される)ことになっているので、そもそも日本の法務局へ提出する目的のためにオーストラリア国法に基づきStatutory Declarationの形式により作成された署名証明書、というものは存在しないのではないか、と考えられる点です。

州法はどうでしょうか?オーストラリア最大都市シドニーのあるNew South Walesの州政府発行のJustice of the Peace用ルールブックには『NSW JPs are not authorised under NSW law to witness the execution of documents for use overseas.(New South Wales州の治安判事は海外で使用する文書の証人になる権限はない)』とされています。

海外で使用する書類の認証はオーストラリアでも公証人の役割とされていて、公証人には公印がありアポスティーユも付けられます。一方でJustice of the Peaceの認証は海外で使用することを予定されていないためアポスティーユは付けられません。

オーストラリアに限らず市民にその職業に基づいて認証権限を与えている国は他にもあります。それらの国の認証文を見ると、銀行員だったり会計士だったりします。国内では通用する正式な認証済みの書類です。しかしながら日本の登記申請書に添付する書類は、本国(または事案によっては外国)「官憲」の作成した証明書のはず。認証権限と官憲は別のものなので、認証権限がある=官憲によって認証された、とイコールの関係にはならないかと思います。アポスティーユが付くか付かないかは官憲の判断基準の一つとなるように思います。

仮に域外の認証を認めるのであれば、代表取締役の印鑑証明書替わりの署名証明書も外国官憲の認証でよいはず。でもこちらはきっぱりと断られます。グローバル時代。法務省が昔の先例・通達を整理して整合性のある通達にしてくだされば、たいして複雑な事案でもないのに法務局のローカルルールのため申請前の事前確認という法務局にとっても司法書士にとっても非効率かつ不経済な作業を省略できるのではないか、と思いますがいかがでしょうか。

 

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